本日は、エメラルドの中でも希少種であるトラピッチェエメラルドにて語りたい。
トラピッチェエメラルドは、近年注目を浴びている希少種のエメラルドのことである。
まずはエメラルドの原産国を読者諸君と確認したい。
エメラルドの代表的な原産国は4ヶ国だ。ブラジル、コロンビア、ジンバブエ、マダガスカルである。とくに良質なエメラルドの原産国として名高いのが南米ブラジル・コロンビアといえる。
南米ブラジル・コロンビアは良質なエメラルドが産出される鉱床を有しているというよりは、そもそも論であるが良質なエメラルドを産出する鉱床を数多く有しているとお伝えした方が無難であろう。
むしろエメラルド鉱床といえば、ブラジルとコロンビアが宝石業界の今日の常識である。
ちなみにジンバブエ、マダガスカルは最近代表国入りしたエメラルドの新しい原産国といえる。これら原産4カ国のエメラルドの違いは「品質と色味」にあるといえよう。
ブラジル、コロンビアのエメラルドは深みのあるディープグリーン、いわゆるエメラルドグリーンだ。一方でジンバブエ、マダガスカルのエメラルドは薄いライトグリーン、イエローグリーンで知られる。
トラピッチェエメラルドの種類は主に三種類のパターンがある。
1.スター効果のような6条紋様
2.スター効果のような6条紋様と中心に六角形の亀甲紋
3.エメラルドが花びらのように散りばめられている花紋様
トラピッチェエメラルドの名の由来と歴史の前知識として、ブラジルやコロンビアを含め、南米(いわゆる南アメリカ大陸)はコロンブスに代表される大航海時代にスペイン・イスパニア帝国による統治を受けた大陸国家という歴史的事実があるため、母国語はスペイン語圏だ。
そのため希少種トラピッチェエメラルドの名称の所以である「トラピッチェ(Trapiche)」とは、スペイン語で「歯車」のことを意味している。
発見当初、このエメラルドの見た目(歯車模様)がコロンビアで日常から使われている「サトウキビの砂糖きびの絞り機(歯車)」とよく似ていることから「トラピッチェ」と名付けられたわけだ。
私たちイケゾエガレ&ロミオが身を置いている宝石業界では1964年、コロンビアのエメラルドの「ムゾー鉱山」から発掘されたことがトラピッチェ(Trapiche)の歴史の始まりであるといわれている。
ちなみにトラピッチェエメラルドの起源及び発見に関する歴史は諸説ある。
というのも19世紀に活躍したフランスの鉱物学者ベルトランの著作には、トラピッチェエメラルドの記述が見受けられることから、ヨーロッパの宝石業界では非公式ながら「19世紀にトラピッチェエメラルドの存在を確認していた」可能性があるからだ。
発見時が19世紀もしくは20世紀であるという学術的議論はともかくとして、水晶体であるベリルがこのようなかたちに形成されること自体が大変珍しい。
長い年月を経て形づくられる意味も含め、トラピッチェエメラルドは希少種のエメラルドであり、市場に流通する場合はプレミア価額となる。
というのもイギリスの国立博物館である19世紀に創設されたヴィクトリア&アルバート博物館(通称:V&A)には、大英帝国時代のコレクションの一つにすでにトラピッチェエメラルドをあしらったジュエリーが展示されているからだ。
トラピッチェエメラルドの採掘量だが、世界的に有名なチボー鉱山、キパマ鉱山、コスケス鉱山といった良質なエメラルド鉱山があるものの、残念ながら世界広しといえどもトラピッチェエメラルドは南米コロンビアでしか発掘されていない。
コロンビアのエメラルド鉱山のなかで、トラピッチェ現象が確認できるエメラルドは全体のわずか1%だ。
さらに割れやすいエメラルド(ベリル鉱石)にあって、トラピッチェエメラルドと出会える確率は「1/100」の割合だ。
もはや千分率のパーミル級の宝石といえる。
一般論としてトラピッチェエメラルドの結晶を、輪切りにすれば放射状に六条のスター効果のような黒い縞模様のような結晶体を肉眼で確認できる。これが「トラピッチェエメラルドの価値と特質」といえる。
また黒模様は鉱石のクロムであることは解明されているのだが、なぜベリルにクロムが入り込み、放射状に見事な模様を生み出すのかは現在のところ解明されていない。
スター効果というのは、たいていは内包物のルチル由来によるものであるが、トラピッチェエメラルドはルチルを起因として発生しておらず、エメラルドとして生成時に何かしらの原因により、クロムによる黒模様が起きていると考えられている。
価値のあるトラピッチェとは、このクロムによる黒模様が均等に放射状に分かれ、かつエメラルドの代名詞ともいえる深みのある豊かな緑のエメラルドグリーンの色彩といえる。
もちろんエメラルドの中に割れやインクルージョン等のキズがない状態となれば、最高品質のトラピッチェエメラルドといえるだろう。そしてそれは市場価値は高額になることは疑いない。
気になる市場で確認できるトラピッチェエメラルドの価額だが、1.0ctあたり12万円以上の市場価値はあると思える。
品質の高いトラピッチェエメラルドは市場に出る前に、内々にコレクター間にて売買されてきた歴史があり、文字通りコレクターアイテムといえるため、読者諸君がお目にかかるトラピッチェエメラルドは、どちらかといえば品質の劣るトラピッチェエメラルドといわざる負えない代物だ。
本サイトでは一般消費者向けに買いやすい価格のトラピッチェエメラルドジュエリーも取り揃えているので、興味がある方はメールを頂ければ幸いだ。
最後にトラピッチェエメラルドの石言葉は、つまり宝石言葉は「回転」である。これは名称の由来に大きく影響を及ぼしているゆえといえよう。
トラピッチェエメラルドとは何ですか?