

本日は宝飾デザイナーのイケゾエガレが提唱する「欧州琳派」についての質問だ。
欧州琳派は「おうしゅうりんぱ」と呼称する。

この聞きなれない単語は、イケゾエガレ考案による造語であるため、読者諸君にとって初めて耳にするという人も多いかと思う。

イケゾエロミオが提唱する「琳派寂」同様、辞書やWikipedia、インターネットのAI機能を用いて検索をしても欧州琳派の「正しい答え」を導き出すことは非常に困難だろう。
欧州琳派とはイケゾエガレ本人の作品スタイルそのものだからだ。

イケゾエガレが提唱する欧州琳派とは、漢字表記から日本の琳派から影響を受けた西欧式琳派と思われがちではあるが、彼自身は明確に「海を越えた琳派」という意味合いを否定している。
そもそもの話ではあるが西欧諸国には、琳派の影響を受けた美術主義がある。

1878年パリ万国博覧会に出品されたエミール・ギメとそのコレクション。
1878年「Le Monde Illustré」の図版より(パリ・ギメ美術館/装飾美術館)。
それは19世紀のフランスで開催されたパリ万国博覧会をきっかけに欧州各国で大流行した「ジャポニスム」であり、和訳すると日本趣味である。

ジャポニスムとは、昆虫や植物文様を主題にした日本美術が、欧州の諸芸術全般に強い影響を与えたという意味合いでの日本美術の総称と言ってもよい。

じつのところ琳派が欧州に輸入される以前に、工芸品や家具そして建築に昆虫や植物等の自然をテーマとする美術様式が欧州で花咲いていた。

いわゆる「アール・ヌーボー」である。
パリの人々が万国博覧会で琳派と出会ったとき、東洋にもアール・ヌーボー的な美意識があることに驚嘆し、日本に親近感を覚えたことは想像に難くない。この装飾芸術がジャポニスムを大流行させる下地の役割的美意識を担ったことは言うまでもない。

その意味からイケゾエガレの欧州琳派とは、西洋諸国から見た琳派というよりも「逆輸入的にアール・ヌーボーを再考し琳派調に表現している」という日本側の視点といってよい。

何よりも欧州琳派を語るうえで忘れてはならないのは「ウィーン分離派」と「アーツ&クラフト運動」の存在だ。

ベルヴェーレ宮オーストリア絵画館 所蔵 グスタフ・クリムト
《ベートヴェン・フリーズ(部分)》(20世紀)
ウィーン分離派とは、世紀末芸術と呼称される総合芸術様式であり、アール・ヌーボー的装飾と象徴主義的表現(内面的世界や神秘性表現)であり、19世紀末にオーストリアの芸術の都ウィーンにて花咲いた美意識である。

ノイエ・ガレリエ 所蔵 グスタフ・クリムト
《アデーレ=ブロッホ・バウアーの肖像Ⅰ》(20世紀)
一方、アーツ&クラフト運動とは、19世紀後半に英国で産業革命による大量生産品に対抗し、日常生活において職人による手工芸の再興運動であり、その美的概念はやがてアール・ヌーボーに継承されていくのである。

職人の手作業で作られた植物をモチーフにした壁紙。
イケゾエガレが提唱する欧州琳派を鑑みるとき、アーツ&クラフト運動による概念の上でウィーン分離派の様式美を投影させていることに気づかされる。

それがイケゾエガレの欧州琳派であり、ジュエリー業界という大海原に数十年間も荒波に揉まれながら航海した結果、発見した新大陸(フロンティア)である。

そしてそれは現代アール・ヌーボー様式美とも称することができる。
以上が今回の質問「イケゾエガレさんが提唱する「欧州琳派」って何ですか?」の私たちの答えである。





















イケゾエガレさんが提唱する「欧州琳派」って何ですか?