まず読者からペリドットのエメラルドカットを購入したいとの申し込みには、心から感謝申し上げたい。
日本ではペリドットが宝石の中でも資産価値としては、低く見られているため歴史深きペリドットの名誉のために良い機会なので誤解を解いておきたく思う。
今回の質問者は「8月生まれの女性からペリドットはサファイアやルビー、ダイヤモンドと違って有名ではないので宝石としての価値はどのぐらいあるんですか?」との質問を頂戴した。
確かに世界四大貴石であるダイヤモンド、サファイア、ルビー、エメラルドと比べてみれば、8月の誕生石ペリドットはイメージ的には見劣りするが知名度はさほど悪くもなく宝石としての価値は申し分ない。
早速だがペリドットの歴史について語ろうかと思う。
ペリドットは鉱物学でいえばケイ酸塩鉱物グループに属する鉱物であり、発色系緑色の宝石だ。
和名は橄欖石(かんらんせき)と呼ばれ、ベトナム原産の東南アジア一帯で栽培されているオリーブような果実から命名されている。ちなみに橄欖石の英称は「オリビン」と呼ばれ、ラテン語のoliva(オリーブ)が語源あり、文字どおりオリーブ色から命名されている。
オリビンの語源がラテン語のオリーブであれば、ペリドットの語源はアラビア語で「宝石」という意味の「faridat(ファリダット)」に由来する。
一般論的に鉱物学者はペリドットのことをオリビンと呼び、私たち宝石商はオリビンのことをペリドットと呼ぶところに専門知識の違いがある。
オリビンとも呼ばれるペリドットは夜間照明の下でも昼間と変わらない鮮やかな緑色を放つことから、闇夜を打ち払い、光を照らす石と呼ばれており、悪魔を追い払う力があると古来から信じられてきた。
そんな経緯から当時、ヨーロッパ大陸とオリエンタル地域の一部を支配していたローマ人から8月の誕生石ペリドットは「夜会のエメラルド」と呼ばれ、通称「イブニングエメラルド」という素晴らしい称号を人々から与えられたほどだ。
とくに歴史的にも有名なペリドットといえば、ケルン大聖堂にある東方の三博士(三聖王)の3つの聖堂を飾っている200ct以上もあるペリドットの巨石だろう。
今でこそ現代宝石学の観点からいえば、宝石鑑定学が化学的に発達したことにより、鉱物の種類を容易に見極めることができるが中世の人々はエメラルドとペリドットを混同しており、見極めることができなかった。
事実、何世紀もの間、ドイツの人たちはかのケルン大聖堂にある三聖王の神殿を飾っている200ctものペリドットが「エメラルド」であったと信じていたほどだ。
それほど高品質のペリドットはエメラルドと見間違えるほど美しく光沢ある色味が内在しているといえる。
通常、ペリドットはイエローグリーン系だが最高品質のペリドットはグリーン系統なので見間違えるのも納得はする。
確かにロンドンの自然史博物館のコレクションに所蔵されている146.1ctものペリドットは最高品質のペリドットであることから見た目では『エメラルド』と見間違えてしまうほどだ。
夜会の宝石「イブニングエメラルド」と称されるペリドットは、魅力的で明るい輝きから異性を惹きつける効果や社交性を高める効果などがあるとされ、パワーストーンとしても人気が高い凡庸性に長けた宝石でもある。
パワーストーンとしてペリドットは非常に人気がある宝石だが、輝きが強い反面割れやすいことから、イケゾエガレ&ロミオ(以下、イケゾと称する)では一粒石の指輪(リング)やネックレスに仕立てたほうがペリドット本来の持ち味を引き出せると考えている。
ちなみにイケゾエガレ&ロミオ兄弟の誕生石もペリドットだ。
最後にこれは余談ではあるが、オークション会社のサザビーズ(Sotheby’s)のフランク・エヴァレット氏(Frank Everett)によれば、2020年5月に開催されたオンラインオークションにて、パロマ・ピカソの大胆なデザインによるペリドットネックレス(ティファニー社製)が約134万円(最低見積価格は約22万円)にて落札されたそうだ。
ダイヤモンドほど知名度は高くはないが、これがオリビンこと8月の誕生石ペリドットの本来の価値であるといえそうだ。
もちろん私たちイケゾでは、世界中のオークション会社の動向を日々チェックしている。
8月の誕生石ペリドットのジュエリーに興味を持った場合は、イケゾ作品をみて頂ければ、読者諸君のお気に入りが見つかることだろう。興味がある方はメールを頂ければ幸いだ。
ペリドットが私の誕生石です。宝石の価値を教えて下さい