[PR]Amazon公式通販|在庫がなくなり次第 販売終了 >>

非加熱のピジョンブラッドルビー

本日の質問

非加熱のピジョンブラッドルビーの価値を教えて下さい

今回の質問者は、非加熱のピジョンブラッドルビーを海外オークションにて転売を目論んでいる駆け出しの宝石商(或いは転売屋)からの質問だ。

本来は答える義務も義理もないが、彼らの前へを進む宝石商として後輩への戒めの意味も含め、本質問に答えたいと思う。

宝石商にとって一番捨てなければならないのは「欲望」だ。

欲望は向上心を促すうえで必須なものではあるが、過剰なまでの欲望及び感情は自制する必要がある。

とりわけお金への欲望、誰よりも「儲けたい」「金持ちになりたい」という欲望は一流の仕事をするうえで邪魔になるからだ。

これら負の感情は宝石商の感覚と判断を狂わし、大損を招き入れることになるので要注意してほしい。

確かにルビーの中で一番価値があるルビーといえば、非加熱のルビーだ。

そのなかでもサザビーズやクリスティーズで数百万円から数千万円の落札価格の値がつくとされるのが「非加熱のピジョンブラッドルビー」である。

不思議なことにWebで検索すれば、非加熱のルビーの裸石及びジュエリーは大手通販モールでたくさん掲載販売されているのが分かる。ここで一攫千金に目を眩んだ駆け出しの宝石商は、商品を掲載している老舗宝石店に「卸価格で売ってくれないか」と価格交渉を行う。

経験則から10人中10人が欲に目が眩み、同じような行動すると断言してもいい。

そして卸価格で安く仕入れた「非加熱のピジョンブラッドルビー」をサザビーズやクリスティーズに出品するための鑑定依頼(事前評価ともいわれる)を某高級オークションハウス担当者経由にて依頼する。

日本支店はあくまで受付にすぎず、商品鑑定及び出品判断は本社のプロフィッショナルが訪日して行う。アポイントをしていればプロフィッショナルの訪日予定日に合わせ、日本支店から連絡がある。ただ本社のプロフィッショナルの訪日鑑定だが「平均数カ月ははかかる」と思ったほうが良い。

現物確認後、彼らからの返信は「大変に残念ですが弊社の出品基準以下のため、不本意ではありますが本品の出品はお断りさせて頂きます」と駆け出しの宝石商にとって信じられない内容が返ってくるわけだ。

当然、返品しようにも購入後数カ月後たった商品の返品などできない。

結果的に一番儲かったのが駆け出しの宝石商に対して、価値のない「非加熱のピジョンブラッドルビー」を販売した大手通販モールに出店していた老舗の宝石商だった、というグリム童話のような教訓めいた話である。

これは作り話ではなく、「現実」に起こった話である。

私たちの知り合いの10人中10人の宝石商が経験し、悲しいことに全員が結果的に廃業した。

以上のことから「宝石は怖い」とか「宝石商は詐欺」とか、或いは「宝石は二束三文」といったネガティブワードが世の中に大きく誤解を招きながら流布されるわけだ。

だが私たちから言わせれば、欲に目が眩んだ諸君のほうが怖いという結論に至る。

そもそも論だが、自分が売っている「非加熱のピジョンブラッドルビー」に価値があれば、駆け出しの宝石商などに売らず、老舗の宝石商自身がサザビーズやクリスティーズに出品しているだろう。

それをしていないということはよくよく考えれば分かることではあるが、老舗宝石商が所有する「非加熱のピジョンブラッドルビー」がサザビーズやクリスティーズ出品基準以下だということだ。

時間をおいて冷静に考えてみれば誰にでも分かることだが、駆け出しの宝石商(或いは転売屋)は「欲」に目が眩んでしまったせいで、宝石商としての見識と経営判断が狂い、間違った仕入れを行い、大損をしてしまったわけだ。

その結果、駆け出しの宝石商は自己破産し、宝石商の道で生計を立てることを諦め、今は飲食店の従業員として汗を流している。

宝石商としての経験則から唯一言えることは「儲かる話は決して表にはでない」ということだ。

大半は仲間内での商談やクローズドマーケットの中で内々に行われているものだ。何でもかんでもオープン化しているというのは、ネット社会の弊害であると私たちは思う。

すなわち彼の仕入れ話は笑い話でも酒の肴にすべき話でもなければ、Web及びネット上には儲かる話など一切存在しないということを肝に銘じる話(教訓)である。

宝石商は大きな金額を動かすからこそ一時の気の迷いが破綻を招く。

破綻を招かないためにすべきことは「売買において自分のルールに忠実に従う」ということだ。これは投資でも同様だ。感情など一切無視して自分のルールに忠実に従っている投資家ほど生き残っているデータがある。

人間は感情の生き物だから感情を捨て去ることは難しいかもしれないが、宝石商として生計を立てようと考えている者は、まず「お金への欲望」を捨て去らなければならない。

お金など一流の仕事をすれば、あとから知名度とともに付いてくるものだ。これは宝石商に限った話ではない。

そこで読者諸君に思い出してほしいことがある。

何を思い出すのかといえば、宝石商としての本義である。

宝石商としての本義、それは「価値のある宝石を安く仕入れる」ことではない。

価値のある宝石を適正価格で一般消費者に販売するということだ。すなわち「宝石の適正価格を消費者に伝える」ことだ。

これを忘れてしまえばミイラ取りがミイラになるのでお互いに気をつけたいところである。

以上が今回の質問「非加熱のピジョンブラッドルビーの価値を教えて下さい」の私たちの答えである。