今回はシンプルだが奥深い質問である宝石(ジェムストーン)と鉱石の違いについて語ろう。
この際、「宝石」「原石」「天然石」「鉱石」のそれぞれの意味の違いをお伝えしたい。
まず鉱物と岩石のことの総称を「天然石」と呼ぶ。特に工業的資源としてみなし活用する場合の総称は鉱石である。
一定の地質から産出される天然由来の単体の結晶系の物質を有する鉱物(ミネラル)と呼称する ちなみにそれらの複数体の結晶形により成立している集合体のことを、鉱物学的には「岩石」と呼んでいる。
天然石のなかで希少性があり、外観が非常に美しさを有し耐久力のある天然石の事を宝石(ジェムストーン)と呼称する。
そのなかでも貴石(代表的な貴石がダイヤモンド)と半貴石に宝石は二分化される。 貴石、半貴石をカッティングし宝飾品(ジュエリー)として台座にセッティングされていないパーツの状態の宝石をルース(裸石)と呼ぶ。
ダイヤモンドのような透明無色石ではなく、ルビーやブルーサファイア、エメラルドのような非常に美しい色彩を帯びた天然宝石のことを色石(カラールース)と呼ぶ。
また加工(研磨)される前の宝石を原石(ラフ)と呼称する。
宝石の中でも鉱物ではなく準鉱物と位置する天然石もある。宝石の範疇のなかで具体的に準鉱物を敢て名前をあげるとすれば以下の五宝石といえる 「琥珀」、「黒玉」、「真珠」、「オパール」、「テクタイト(モルダバイト)」である。
はじめに琥珀について語ろう。琥珀(英訳のアンバー)は天然樹脂の化石である。欧州では、古くから宝飾品として使用されてきた経緯のある準鉱物(準宝石)である。古代ギリシャでは太陽の輝きを放つ宝石として重宝されていた文献があるほどだ。
バルト三国(リトニア、ラトビア、エストニア)のバルト海沿岸地域が琥珀の原産国であり、ポーランドは琥珀産業の一大生産国であることはこの業界では常識である。
ロシアのサンクトペテルブルグにあるエカテリーナ宮殿の琥珀の間は、部屋全体が琥珀で装飾され圧巻する迫力がある。
次に黒玉(英訳のジェット)であるが、ジェットとは化石化した樹木である。石炭に近い宝石であるゆえ燃えやすい点は留意すべきであろう。宝石としては照りのない黒真珠、 鈍い漆黒の色彩が魅力的だ。
有名なエピソードは、現英国王室のハノーバー朝のヴィクトリア女王(在位1862年-在位1901年)がザクセン公でもある 夫アルバート公の喪に服した際に身に着けたジュエリーとして英国で人気を博したことが有名なエピソードだ。
パールで名高い真珠。日本で生み出すことのできる宝石としてわが国が誇る海の宝石だ。バイオミネラル(生体鉱物)と呼ばれる準鉱物である。
四季の行事を重んじる日本の冠婚葬祭において、気軽に身に着けやすいジュエリーとして日本人女性に愛用されている宝石といえよう。
世界的には真珠は「人魚の涙」「月の雫」とも呼ばれ古くから重宝されてきた経緯がある。日本の真珠の美しさは、欧州にまで伝来されており大航海時代クリストファー・コロンブスも黄金の国「ジパング」の宝飾品として憧れたといわれる。現在真珠の一大取引地域は香港といわれている。
次にオパールについて語る。厳密にはオパールは準鉱物であるが、国際的な鉱物機関(IUGS)ではオパールは鉱物であると公認している。名称の由来はラテン語やサンスクリット語に由来すると言われている。
価値のあるオパールといえばプレシャスオパールといわれる遊色効果を見受けられるオパールである。ブラックオパールとファイアーオパールの 二種類に区分される。特にオパールは真珠同様に日本人女性が愛用してやまない宝石の一つとして名高い。
最後にモルダバイトについて語る。宇宙から地球への隕石衝突によって生じた天然ガラス素材をテクタイトと呼称する。ガラス成分は地球の鉱物と同じである。ガラス成分は地球への隕石衝突時に発生したエネルギーで気化した地表の岩や砂などが主成分といわれている。
宝石として名高いのはチェコの付近で採取される緑色の天然ガラス「モルダバイト」である。
宝石と鉱石の違いは何ですか?