今回の質問者は、世界初のダイヤモンド先物取引所について個人投資家からの質問だ。
ダイヤモンドの先物取引だが、4C等級の関係から先物取引に適当ではない旨を前回記事では伝えたとおりだ。
そのうえでダイヤモンドの先物相場について論じたい。
世界初のダイヤモンド先物取引所は、インド商品取引所にて「上場商品」として取り扱っている。
株券や商品価格をオープン化して投資家に販売することを「上場」と呼び、とりわけ先物商品に関しては「上場商品」と呼ぶ。
4Cにて厳格に等級付けされているダイヤモンドが上場商品に相応しいかどうかの論議はさておき、このような野心的な取り組みは評価されるべきだと私たちは思う。
このダイヤモンド先物取引所の信用度ではあるが、インド財務省やインド証券取引委員会との協議を経て導入されていることから政府公認といえる。
なぜダイヤモンド先物取引所がインドなのかといえば、ダイヤモンドの世界最大の生産国がインド(厳密にはインド北西部クジャラート州)だからだ。
クジャラート州のダイヤモンド研磨業者はあまり知られていないが、世界のダイヤモンドの約90%を研磨しており、世界最大手のダイヤモンド生産会社デビアスから原石調達をはじめ、1年間の原石輸入量は約1億5300万カラットにも及ぶ。
世界のダイヤモンド年間総産出量が1億カラット以上といわれるなか、クジャラート州のダイヤモンド産業はインドを代表する産業の一つなのだ。
しかしながらダイヤモンド先物は世界中の先物取引所にて広がりをみせていないことから、インドのダイヤモンド先物取引は不成功に終わったといってもよい。
結果的にダイヤモンドの先物相場という考え方は、ダイヤモンド業界においては適当ではないということだ。
とはいえどもインドには世界最大のダイヤモンド市場がある。
先物取引は不成功に終わったとしても、バーラト・ダイヤモンド取引所(略称:BDB)はインドのムンバイにある世界最大のダイヤモンド取引所での現物取引は活発だ。
バーラトとはヒンディー語でインドを表す言葉だ。
そもそもインド憲法は英語表記のインディア(India)とヒンディー語表記のバーラトの両方を国名として併記している。
バーラト・ダイヤモンド取引所は英訳すれば「インド・ダイヤモンド取引所」という意味である。
日本でいえば英語表記のジャパン(Japan)と日本語表記のニッポン(Nippon)と同じようなものだ。
どこかで役立つかもしれないので頭の片隅に覚えておいても損はない。
さて多少脱線したので話をもとに戻すが、インド最大のダイヤモンド取引所はBDBだが、スーラトにも巨大なダイヤモンド取引所がある。
2023年12月17日に新しいダイヤモンド取引所として開設されたスーラト・ダイヤモンド取引所(SDB)だ。
スーラトの名称は港湾都市の名称である。
インドでは第8番目に人口が多い都市であり、都市人口数は約700万人だ。
SDBの床面積は65万9,611平方メートル、世界最大のオフィスビルとして床面積61万平方メートル強の米国国防総省(ペンタゴン)を上回る。
スーラトはダイヤモンド研磨の中心地ではあるが、取引の中心地は車で5時間離れたマハーラーシュトラ州の州都ムンバイだ。
インド政府は州を越えての取引の是正とダイヤモンドビジネスの回転率と効率化を高めるため、ダイヤモンド取引のインフラを整えた。
それが新設されるスーラト・ダイヤモンド取引所(SDB)というわけだ。
クジャラート州内の取引はクジャラート州内で完結させることにより、州産業であるダイヤモンド産業と州内総生産の底上げをはかっているわけだ。
これらの取引所で売買される「現物取引による業者間のダイヤモンド相場」こそ、本当のダイヤモンド相場である。
要約すれば、現在のところダイヤモンド相場は「現物取引による現物相場が主体」といえる。
以上が今回の質問「インドのダイヤモンドの先物相場は信用できますか?」の私たちの答えである。
インドのダイヤモンド先物相場は信用できますか?