今回の質問者は、宝石学校を卒業した新人宝飾デザイナー(女性)から続けての質問だ。
イエローダイヤモンドの概要、すなわち通常のダイヤモンドとの大きな違いは「イエローダイヤモンドのルース」にて説明したとおりだ。
その相場観に関しても「イエローダイヤモンドの相場」にて説明したとおりだ。
読まれていない方は後学のために読まれることをおススメする。
それでは本題に入らせてもらう。
この質問に関しては「トリートメント」に詳しく説明させてもらうが、前知識として諸君が学ばれることを切に希望する。
私たちの業界では、元々の天然色を帯びたダイヤモンドはナチュラルカラーのダイヤモンド(通称:ナチュラルダイヤモンド)と呼び、人為的処理をされた処理石は「トリートメントダイヤモンド」と呼ばれる。
そこでダイヤモンドに施されるトリートメント処理というのは、人工的な処理のことを指す。
人為的処理とも呼ばれるが、代表的なトリートメント処理としてダイヤモンドの細かいキズを埋めるため「充填処理」を含めて4処理ある。
【充填処理】
1つ目の充填処理(じゅうてんしょり)と呼ばれるトリートメント処理は、ガラスや透明剤を傷に充填して透明度を高めるものだが、この処理をされたダイヤモンドは意図的に等級評価から除外され、極端に評価が低くなる。
すなわち資産価値が10分の1ぐらいになる。
これはダイヤモンドだけでなくコランダム(ルビー、サファイア)、タンザナイト、トルマリン等でもみられる一般的な処理だ。
当然のように充填処理された天然石は天然石というよりも処理石になる。
次に代表的なものが「LDH処理」だ。
【LDH処理】
2つ目のLDH処理(レーザードリルホール)と呼ばれるトリートメント処理で、ダイヤモンドにはインクルージョン(不純物・内包物)が多いため、とくに肉眼でのインクルージョン除去を目的としたものだ。
レーザー光線を照射し、極小の穴を開けてダイヤモンドカーボン(黒点と呼ばれる不純物)を除去する人為的な処理方法ではあるが、この処理をされたダイヤモンドは鑑定書に「レーザードリルホール(LDH)を認む」という内容が必ず記載される。
LDH処理ダイヤモンドは、等級評価からは除外されないが人為的にクラリティの評価を向上させるための処理であるため、当然のように取引価格が下がることから仕入れ交渉においても注意が必要だ。
3つ目の代表的なものが「カラートリートメント処理」だ。
【カラートリートメント処理】
カラートリートメント、文字どおりダイヤモンドに対して放射線照射処理にて着色する人為的処理だ。
具体的なトリートメントダイヤモンドを例にあげるとするならば、ブラウンダイヤモンドに「ラジウム線」を照射すれば、ディープグリーンダイヤモンドとなる。
だからといってディープグリーンダイヤモンドがカラーダイヤモンドとして価値があるかといえば、極論でいえば価値はない。
というのも人為的処理をする前は「ブラウンダイヤモンド」であったことから、資産評価として「ブラウンダイヤモンド+放射線照射処理」として評価される。
そもそもダイヤモンドは無色透明ほど価値が高いことから、ブラウンダイヤモンドは褐色ダイヤモンドであることから市場評価は低く、そこに放射線照射処理を施している。
そのうえで処理石のディープグリーンダイヤモンドに価値があるかといえばジュエリーの「ブランド力」に左右されるといってもよい。
最後の4つ目のトリートメント処理が「HPHTプロセス」と呼ばれる処理だ。
【HPHTプロセス】
和訳すれば「高温高圧プロセス」と呼ばれるもので、ダイヤモンドの生成環境を人為的に作ることにより、ダイヤモンドの色を変化させるトリートメント処理だ。
この処理方法を活用すれば、高温高圧をかけることによりブラウンダイヤモンドを「無色透明」にすることができる。
高温高圧プロセス時に処理予定のダイヤモンドが窒素を多くむのであれば、処理後のダイヤモンドはイエローダイヤモンドとなり、窒素ではなくホウ素を多く含むのであればブルーダイヤモンドとなる。
だからといって価値があるのかといえば、放射線照射処理された処理石ダイヤモンドと価値は変わらない。
GIAルールにより、ダイヤモンドの鑑定書の「色の起源(Color Origin)」という項目に「HPHTプロセス」と必ず記載される。
以上がトリートメント処理の4大処理と呼ばれるものだが、そこで諸君に思い出してほしいことがある。
トリートメント処理された天然ダイヤモンドは「処理石」と呼ばれるわけだが、合成石であるラボグロウンダイヤモンドと比べて価値があるかどうかだ。
実際にメルカリで取引されてるピンクダイヤモンドのラボグロウンダイヤモンドを例にすれば、大変に分かりやすいので是非とも参考にしてもらいたい。
処理石のピンクダイヤモンド(HPHTプロセス)のダイヤモンドも同じぐらいの価格で取引されていることから、処理石と合成石は極論をいえば「同等価値」といえる。
このことから以下がダイヤモンドの評価基準(最新)だ。
天然石(ナチュラル)>処理石(トリートメント)=合成石(ラボグロウン)
処理石と合成石は同等価値であるならば、諸君は評価の低い処理石をわざわざ仕入れる必要はない。
私たちのジュエリー作品にはイエローダイヤモンド(ラボグロウン)をふんだんに使用しているジュエリーもあるので、興味がある方はメールを頂ければ幸いだ。
これが今回の質問「イエローダイヤモンドのトリートメントについて教えて下さい」の私たちの答えである。
文:イケゾエガレ 編集:琳派編集部
イエローダイヤモンドのトリートメントについて教えて下さい